Whats Up, Docs?よりKevinDの“From counting cards to reconstructing game states"の翻訳です。
過剰なカードを引いたかもしれない時や、土地をプレイしたかどうかわからなくなった時に役立つ「カード・カウンティング」と「ゲームの再構築」について、その方法と注意点を例を交えて解説しています。
プレイヤーが過剰なカードを引いたかどうかが不確かな状況というのは、めずらしいものではない。プロツアー ニクスへの旅において、Guillaume Wafo-Tapaが過剰なカードを引いたのではないかと対戦相手から申し立てられたのはいい例だ(この件は後のビデオ調査で、濡れ衣だったと判明した)。このような状況は取り扱いが難しい。考慮しなければいけない要素はたくさんあるし、情報が不完全なこともしょっちゅうだ。しかし、種々の要素を組み合わせることによって、正確なカードの枚数を導き出すことや、ゲーム全体の状況を正常に戻すことさえ可能である。プレイヤーが1ターンに2枚の土地をプレイしていないかの確認や、正しいライフを導き出すことの手掛かりにもなる。
「過剰なカードを引いた(DEC)」が「ゲームの敗北(GL)」に値する理由のひとつに、ゲームの基礎的な制約として通常は各ターンに1枚しかカードをひけないということが挙げられる。それ以上カードを引きたいのならば、他の限られた資源、マナをつぎ込まなければいけない。対戦相手のハンド枚数が多いのではないかと思ったプレイヤーにジャッジが呼ばれることよくはある。そこに呼ばれたとき、そのプレイヤーがアクセスすることができたカードの枚数を数えることが最も好ましい。
最初に確認すべきことは、次の2点だ。
カードを引く呪文や能力を使ったのでない限り、プレイヤーは各ターン1枚ずつしかカードを引けない。つまり今が先手プレイヤーのターンなら、後手プレイヤーはまだ自分のターンの分のカードを引いていないので、両プレーヤーは同じ枚数のカードを持っているはずだ。反対に後手プレイヤーのターンなら、後手プレイヤーが一枚多く持っているはずだ。つまり、今がどちらのターンか分からなくなった時にもカードカウンティングは 有効だということだ。
簡単だろう?次は間違えやすいポイントを見ていこう!
マジックのカードには、カードを一枚引くもの(キャントリップ)や、カードを一枚ライブラリーから探すものがたくさんある。《思案/Ponder》《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》がその例だ。そのカード自身と引き換えにして、プレイヤーは追加のカードを一枚得る。もしこれらのカードが(捨てられたり追放されたりしたのではなく)プレイされていた場合、カード・カウンティングの際に勘定に入れてはいけない。
《予言/Divination》のように、2枚以上のカードを得る場合はもう少し複雑だ。このようなケースでは、引いたカードと同じ枚数だけカードを除外する。この場合は、《予言/Divination》ともう一枚別のカードを除外すればいい。
で禁止されているため、このケースは少なくなっている。とはいえ、気をつけておくに越したことはない。自身をライブラリーに混ぜるカードや、《不死の霊薬/Elixir of Immortality》や《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》のように墓地の一部あるいはすべてをライブラリーに混ぜるカードを使用していないかは常に確認しよう。
精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》や《土地税/Land Tax》、《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》のようなカードを考慮するのは本当に骨が折れる。これらは一見、カード・カウンティングを不可能にするかのように思えるが、必ずしもそうではない。
すでにゲームが長引いているときなどは、この方法ではうまくいかないこともある。しかし、ニースでのワールド・マジック・カップのようなケースもある。
ゲームの8ターン目に、後手プレイヤーが過剰なカードを持っているのではないかと先手プレイヤーは感じた。カード・カウンティングによって、後手プレイヤーは過剰なカードを持っている可能性があることが分かった。そこで私は次のように言った。先手プレイヤーは《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》をコントロールしている。これによってライブラリーから追加の土地をプレイすることが出来るという点がこの問題のポイントだ。もし土地がライブラリーからプレイされたのならば、それはカード・カウンティングでは除外されるものなので、後手プレイヤーは過剰なカードを持っていないということになる。(※訳注1) それを判断することはほとんど不可能に思えた。偶然にも先手プレイヤーがマナスクリューしていなかったら、調査することは不可能だっただろう。その時彼は土地を4つしかコントロールしておらず、墓地にも1枚あるだけだった。リソースが限られているといことは私にとって好都合だった。そして私たちは、先手プレイヤーの立場からゲームを再構築した。先手プレイヤーは次の順でカードをプレイしたと私は考えた。
両プレイヤーはこの順序に同意した。とりわけ、2枚目の《ニクスの祭殿、ニクソス/Nykthos, Shrine to Nyx》が4ターン目であり、《森の女人像/Sylvan Caryatid》が2ターン目ではなかったという点も確認がとれた。正確な流れが分かったので、私は次のような結論を導きだすことができた。
マジック違反処置指針(IPG)には、DECの定義のひとつに「本来持ち得ない枚数のカードを手札に持っていた。」とある。裁定を決める前に、本当にそのプレイヤーが持っているのが本当に過剰なカードなのか、過剰なのではなく、ドロー忘れをした対戦相手が過少ではないのかを確認する必要がある。今何ターン目なのかを確認し、ターン数とあわせてカード・カウンティングを行うことが重要なのはこのためである。(正確なターン数が分からなくて)一方のプレイヤーの手札が過剰なのか、他方が過少なのかを断定できないときは、過少な方のプレイヤーに差分のカードを引かせるにとどめ、GLは出さない。
探査があるフォーマットや、プレイヤーがこのターンに土地をプレイしたかどうかが定かではない時にも、ゲームを再構築することは有効だ。ニースのワールド・チャンピオンシップでの例を二つ挙げよう。
5ターン目に、APの《宝船の巡航/Treasure Cruise》コストの支払いが不正だった疑いがあるとNAPがジャッジを呼んだ。探査で追放したカードが一枚少なかったと彼は言うが、APはそれを否定した。それ以前に別の《宝船の巡航/Treasure Cruise》が解決されており、その時に何枚追放されていたのかがはっきりしないのが問題であった。APは4枚だったと言い、NAPは5枚だったと主張する。
簡潔に分析するとこれは古典的な水掛け論で、行き詰りだ。だが、ある一点が私の救いとなった。ショックランドだ。私はカードのみならずライフメモも利用してゲームの再構築を行った。APは5枚のショックランドをコントロールしており、1枚のフェッチランドを追放していた。ライフが11だったので、ショックインしたのは4回だ。つまり、1枚はタップインしたということになる。このことから、彼は4ターン目にショックインし、4マナと探査4で《宝船の巡航/Treasure Cruise》を唱えたことが分かった。よって5ターン目の《宝船の巡航/Treasure Cruise》のコストの支払いに不正はなかった。
ゲームの終盤(おそらく10~11ターン目と思われる。土地を置かなかったターンもあっただろう。)、APがこのターン2枚目の土地をプレイしたのではないかという質問があった(ドロースペルの解決後にはよくあることだ)。問題点はDECではなかったので、カード・カウンティングは無意味だ。プレイヤーが2枚土地をプレイしたかどうかは、このターンの初めに何枚土地をコントロールしていたかを考えればよい。つまり、直前のターンどうだったかということだ。 なので私はカード・カウンティングではなく、単純に使用されたマナから直前のターンを再構築しようと試みた。エンド時に立っていた土地がどれかを尋ねたところ、「フルタップだった」と返ってきた。それなら簡単じゃないか。唱えられた呪文のマナコストを足せばいいだけだ。もし仮にフルタップじゃなかったとしても、希望はまだある。立っていた土地がどれかの同意を得られる可能性は残っている。対戦相手が2マナのカウンター呪文を警戒していたというような例が考えられる。
カード・カウンティングや、ターン数を明らかにするテクニックは、曖昧なものをはっきりさせたい時に使える重要な技術だ。DECや、1ターンに複数の土地をプレイすることは、プレイヤーに重大な利益をもたらす。それゆえ、カード・カウンティングを軽々しく扱ってはいけない。
Kevin Desprez 訳注1:前提と逆の結論が出ているため、この段落が誤りの可能性があります。