Player ExperienceよりBrook Gardner-Durbinの“Slow Play: Myths and Truths”の翻訳です。[遅いプレイ]についてよくある誤解や分かりにくい点をFAQ形式で説明し、[遅延行為]との違いや問題点なども丁寧に書かれています。

原文はこちら(2016/11/02付)


どんなデッキを持っていくか、そのために何をプレイするか、といったことと比較しても競技の大会において時間管理は最重要テーマの一つと言える。参加者が15人しかいないPPTQでも2000人のグランプリでも、時間管理に関わる問題は同様にあなたに降りかかる。

  • 次のラウンドが始まるまでに昼食を食べる時間はあるだろうか?
  • 15分前にラウンドが終わったけど、次の対戦組み合わせの発表はどこだろう?
  • 対戦相手がプレイを進めてくれないけど、どうしよう?
  • このターンが肝心だぞ!じっくり考える時間が欲しいのに、どうしてジャッジは急かすのだろう?

この記事では、[遅いプレイ]とは何かを説明し、プレイヤーがするべきことと、しなければいけない理由に関するよくある質問に答えていこう。よくある誤解、[遅延行為]について、そして、なぜそれらをしてはいけないのかも解説する。

[遅いプレイ]とは何か

『マジック違反処置指針』は、[ルール適用度:競技]の大会におけるあらゆる規定違反に対する指針と追加措置が記されたジャッジ向けの文書である。これによると、“適正な時間内にゲームの行動を終わらせなかった”プレイヤーは[イベント上の誤り ─ 遅いプレイ]という違反に該当する。以下のような例も挙げられている。

  • 何もゲームの状態が変わっていないのに対戦相手の墓地を何度も確認した。
  • 《思考の大出血/Thought Hemorrhage》の解決中に時間をかけて相手のデッキ内容を記録した。
  • マジックのプロツアー予選で、ゲーム間にデッキをシャッフルするのにあまりにも時間がかかっていた。
  • スタッフの許可なく、席を立って順位を確認しに行ったりトイレに行ったりした。

[遅いプレイ]に対しては、1回目で【警告】、2回目だと【ゲームの敗北】が与えられる。

挙げられた複数の例を見ると、[遅いプレイ]が適用される範囲の広さと、判断がジャッジの主観によることがわかるだろう。潜在的に[遅いプレイ]になり得る行動は非常に多いににもかかわらず、そういった行動をすべてひっくるめて「3ゲームを50分以内に終わらせなかった」という一言に丸められてしまいがちだ。

よくある質問

「制限時間ってなんですか?」

大会主催者は、イベントの制限時間を概ね自由に設定することができる。競技のイベントでは1ラウンドの制限時間は50分が一般的だ。(グランプリやPPTQ及びその他のプレミアイベントのように)ウィザース社がラウンドの制限時間を指定しない場合、大会主催者は制限時間を40分以上で自由に設定できる。

「制限時間が過ぎてもマッチの決着がつかなかった場合はどうなりますか?」

対戦中のプレイヤーには、制限時間終了時点で進行中のターンの終了後に、追加の5ターンが与えられる。両者合わせて合計5ターンが経過してもまだ決着がつかない場合は、そのゲームは引き分けになる。ゲームカウントが1-0の状態で2ゲーム目が時間切れで引き分けた場合、そのマッチは1-0-1で終了となる。大会では、マッチに勝ったプレイヤーにはマッチポイント3点、負けたプレイヤーには0点、引き分けた両者には1点が与えられる。

「自分のペースでプレイしてはいけないのですか?」

皆が大会を円滑に進行できるように、マッチには制限時間が設けられている。この制限時間がなかったら、大がいつ終わるのか予想を立てることができず、プレイヤーにとってもジャッジにとっても不便になるだろう。

「[遅いプレイ]の基準が主観的なのはなぜですか?具体的な基準はないのですか?」

仮に「ひとつのアクションを30秒以内に行うこと」という具体的な基準があったとしたら、これはルールの悪用を招くことになりかねない(これは[遅延行為]呼ばれる故意の違反で、詳しくは後述する)。しかもアクションによって考えるのに必要な時間はまちまちなので、この基準はうまく機能しないだろう。攻撃クリーチャーの指定に15秒かけることさえ合理的でないこともあれば、1分かけたって不合理とは言えないこともある。ゲームの状況やそれまでのプレイ、その他のあらゆる変化し続ける要素から、ジャッジはその行動が[遅いプレイ]に該当するかどうかを決定する。

「マジック・オンラインのタイマーやチェスクロックの類は導入しないのですか?」

すべての会場と店舗にクロックを導入するとして、そのコストに見合った効果が現実のマジックで得られるとは考えにくい。1ターンの間に何回も何十回も優先権の授受が素早く連続して行われる上に、プレイヤーはアクションを行うたびにクロックを押すことを覚えておく必要がある。試しに今度プレイするときに、適当なメモパッドか何かをクロックに見立てて、優先権をパスするたびに叩いてみるといい。すぐにうんざりするだろう。

またクロックの導入は、腕を骨折している人、車椅子に乗っている人、目が見えない人などがプレイする上で障害となる。体ではなく頭を使うゲームとして、あらゆる人にオープンであることはマジックの重要なポイントだ。

よくある誤解

[遅いプレイ]は主観的だし、それで警告を受けるプレイヤーもあまり多くない。そのため、誤解されがちな点がいくつかある。

「戦況がとても複雑なので、戦闘フェイズのプレイにより時間をかけるべきだ。」

これは、それまでのプレイによるところが大きい。例を挙げて考えてみよう。リミテッドのマッチで、4ターン目から10ターン目まで両プレイヤーが毎ターンクリーチャーを1体ずつプレイしたが、攻撃はしなかったとする。この場合、戦場の状況は1ターンごとに順を追って変化している。どちらのプレイヤーも、それぞれのターンに特別に時間をかけることは許容されない。攻撃できるかどうかはすでに決まっていて、ターンが来るたびにあらゆる手を最初から考える必要はなく、変化した部分についてのみプレイを考えればいい。

しかし仮に戦況がこれまでのターンと比較して大きく変化した場合、より多くの時間をかけて考えることは理にかなっている。《歪んだ世界/Warp World》や《大オーロラ/The Great Aurora》のような戦場に大きな変化を与える呪文を解決したあとなら、攻撃するかどうかについて一から考える必要があるのは理解できる。つまり、何をもって『適正』とするかは変化しうるし、[遅いプレイ]で警告が与えられるまでにはより多くの時間が与えられる。

「今までずっと素早くプレイしてきたので、今はゆっくり考えることができるはずだ。」

例えば野球をしているときに、必要以上に速く走って次の累に着いたとしよう。ボールよりも先に塁についた時間の差分、次の打順で早く走塁を開始していいだろうか?もちろんそうではないね!それぞれのターン、そしてそれぞれのアクションは互いに独立したものだとみなされる。ゲームの序盤に素早くプレイをすることは好ましいが(ゲームが長引いたときにより多く時間を使えるようにするためだ)、それで[遅いプレイ]に対する免罪符を得られるわけではない。

「私のプレイはちょっと遅いかもしれないけれど、対戦相手ほどではない。私が[遅いプレイ]で警告を受けることはないはずだ。」

対戦相手のプレイを遅いと感じたなら、ジャッジを呼んでマッチを見ていてもらうようお願いしよう。遅いと思ったらすぐにジャッジを呼ぶことだ。ラウンドが終わってからでは間に合わないからね。

「でも対戦相手のほうが遅いよ!」というのは、あなたが時間をかけて考えていい理由にはならない。対戦相手のプレイが遅いかどうかは、あなたのプレイが遅いかどうかとは関係ないことだ。両方のプレイヤーに[遅いプレイ]で警告が出されるのは珍しいことではない。

このような誤解一因として、自分がどれくらいの時間をかけて考えているのかをプレイヤーはあまり意識していないことが挙げられる。自分がかけた時間というものは過小評価されがちで(考えている内容に意識が向いているからね)、相手がかけた時間というものは過大評価されがちだ(相手が考えている間、自分はただ退屈に座っているだけだからね)。幸いなことに、プレイのペースについてジャッジは外部的でより客観的な視点を持っているので、必要だと思ったときは躊躇わずにジャッジを呼んでほしい。

「制限時間が終了して延長ターンに入った。あとはもう好きなだけ時間をかけていいよね。」

延長ターン中であっても、あるいは時間無制限のマッチ中でも[遅いプレイ]で警告を受けることはあり得る。君のゲームの状況にかかわらず、マッチを(そして大会を)円滑に進行させることが重視される。延長ターン中に時間をかけてプレイすることは、その大会全体、関係者全員を遅らせることにつながる。まず第一に、時間通りにプレイを進めよう。誰かが先にマッチを終わらせていて君のマッチが終わるのを待っているとしたら、君はその人たちの時間を借りているということになる。

「コントロール・デッキはいつも時間がかかる。自分のターンに何もしていないのに!」

コントロール・デッキは、自身のターン中に何もせずゲームを長引かせているように思われやすい。しかし大会では[遅いプレイ]を出されることはそれほど多くないのはなぜだろう。

プレイヤーが警告を受けずにいるには「何かをする」必要はなく、ただ合理的なペースで意思決定を行えばよい。コントロール・デッキを使っているプレイヤーは、打ち消し呪文を使うため余分に時間を使うことは少ないが、かといって20ターン目になるまでクリーチャーを唱えなかったからといって罰せられることもない。つまり[遅いプレイ]の観点からは、マッチと大会を進行させることが重要であって、勝てそうなときに攻撃したり呪文を唱えたりしないというだけで警告を受けることはない。

王手をかけない理由がデッキにあるのかもしれないし、全力突撃したくない理由がプレイヤーにあるのかもしれない。対戦相手の手札に致命的なカードがあるかもしれないし、計算間違いで勝ちを逃しただけかもしれない。重要なのは、できるだけ短い時間でゲームを終わらせることではなく、次の一手を合理的な時間内で決断することだ。

[遅いプレイ]VS[遅延行為]

これまで本稿では[遅いプレイ]について述べてきた。プレイの速度が意図せず不十分であった際に与えられる警告だ。ところがこの[遅いプレイ]には、[遅延行為]という名の邪悪な双子がいる。

『マジック違反処置指針』をもう一度見てみよう。[遅延行為]の定義には、“時間制限を利用して有利にしようと、故意にプレイを遅くした場合はこの違反になる。”とある。これに与えれる懲罰は、【失格】だ。

ここで挙げられいてる例は次の通りだ。

  • 手札に土地カード2枚だけを持っているプレイヤーが、ゲームに大した意味のある行動を取れない状況で時間をかけて『考え込んで』いて、時間を食いつぶしていた。
  • 優勢なプレイヤーが、対戦相手に逆転のチャンスを与えないように明らかにプレイのペースを落としていた。
  • 遅いプレイをしていたプレイヤーが【警告】を受けた際、考える時間を稼ぐために上訴した。
  • マッチの第3ゲームの開始前に、対戦相手が時間内に勝ちにくくなるように、故意にゆっくりとマリガンを行った。
  • ゲームで不利になったプレイヤーが、時間切れになるようにプレイのペースを落とした。

これらのケースにおける問題は、プレイヤーが制限時間を悪用するために故意にゆっくりと行動していることだ。次の手はもう決めているのに、まだ考えているふりをして時間を引き延ばしているということだ。

これはブラフではない。マジックにおいて秘匿情報が大きな意味を持つことは、我々ジャッジもよく知っている。手札の2枚の土地が《破滅の刃/Doom Blade》と《謎めいた命令/Cryptic Command》だと対戦相手に思わせる必要があることだってあるだろう。選択肢がない時に少し考え込むことで、応手があるように見せかけることはできるけれでも、過剰に時間をかけてはならない。また、考えているふりをして時間を浪費することと、考えているように見せかけることは同じではない。ジャッジはこの違いを見分けるのが得意なので、ブラフにみせかけた[遅延行為]を試みるのはやめたほうがいい。

[遅延行為]は[失格]にあたる違反だ。マッチに割り当てられた数のゲームに勝った者がマッチの勝者であって、最初のゲームに勝った後は時間稼ぎをしてそれ以降のゲームが終わらないようにした者ではない。[遅延行為]は大会の誠実性を侵害するもので、れっきとした故意の違反である。

競技性の低い大会において

FNMやプレリリース・イベントのような[ルール適用度:一般]の大会においては、プレイヤーが違反をおかしてしまった際の対応が異なり、[警告]や[ゲームの敗北]といった懲罰はない。しかし、だからといって[遅いプレイ]が許されるわけではない!

[ルール適用度:一般]のイベントは、グランプリやRPTQのような大会と比べてよりカジュアルで気軽なものであってほしいという意図がある。しかし、与えられた時間の中でマッチを終わらせることがプレイヤーに求められているという点は同じである。

もしこのような大会で対戦相手のプレイが遅いと感じたら、優しく指摘しつつマッチの残り時間を伝えるといいだろう。それでもうまくいかないときは、ためらわずにジャッジを呼んでほしい。FNMのような大会であっても、[遅延行為]はやはり[失格]に値する違反である。

まとめ

マッチの設定がどんなものであっても、通常は3ゲームを50分で終わらせるペースでプレイすることを心掛けてほしい。対戦相手のプレイが遅いと感じたら、それが意図的かどうかはさておき、ジャッジを呼んで状況を説明するといい。プレイヤーには、妥当な速度で意思決定を行い、制限時間内にゲームを終わらせる義務があることを覚えておいてほしい。

編集:Aruna Prem Bianzino 審査:Jeremy Fain, John Temple, Matthew Pitzer, Eskil Myrenberg, Matteo Callegari, Sandra Regalado

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