Whats Up, Docs?よりKevinDの“Miscommunication? You need to make a decision!”の翻訳です。宣言の聞き間違いなど、コミュニケーション上の齟齬が起きた際の、巻き戻しを含めた対応について、実例を挙げて簡潔に説明しています。

原文はこちら(2015/9/30付)


誰も違反を犯していないのに、ゲームに深刻な損害が与えられることがある。その中でもよくあるのが、コミュニケーション・エラーだ。皆無ではなくとも不十分なコミュニケーションが引き起こす、ゲームの状況についての認識の不一致のうち、意思疎通規定抵触行為に該当しないもののことだ。

直観的な反応:巻き戻し

そういった状況になると、両者の認識が一致している時点までゲームを巻き戻したくなるものだ。しかしそれでうまくいくことはまずないだろう。

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私がジャッジをしたGPで実際にあったケースを見てみよう。APは3/3のクリーチャー2体で攻撃した。NAPは黙ったまま自分のクリーチャーを動かして、2体の2/2をAPの3/3のうち1体の前に置き、APに目を向けた。「ブロックはそれでいいですか?」とAPが尋ねてもNAPは何も言わなかったが、小さくうなずいたように見えたとAPは後に述べる。「Yes」の返事だと捉えたAPは、ブロックされたクリーチャーに《巨大化/Giant Growth》を唱えた。するとNAPが「待って待って。まだブロック指定を考えてる最中です。」と言ってジャッジを呼んだ。

まずはNAPの不正を疑いたくなるが、今話したいのはそういうことではないので、今回は故意の違反ではないものとしよう。(故意の違反の可能性をまず考慮したことはもちろん正しいよ!)

では、両者の認識が一致している時点まで巻き戻すとどうなるか考えてみよう。NAPはブロック・クリーチャー指定は終わっていないと主張している。つまり《巨大化/Giant Growth》を手札に戻し、ブロック・クリーチャーを指定しなおすだけだ。

ところがそうすると、NAPはブロック・クリーチャーを指定するにあたって追加の情報を得ている分有利になる。NAPの選択肢を整理してみよう。

  • ダブル・ブロックして2体ともクリーチャーを失う。
  • 1体だけで、あるいは1体ずつブロックする。(一般的には悪手だ)
  • まだライフには余裕があるので今はブロックせず、《巨大化/Giant Growth》に注意してゲームを続ける。

巻き戻しをするとどうなるだろうか。

  • ゲームの状況は本来あるべき姿に近づくか、それともいっそう乖離させてしまうだろうか。
  • コミュニケーションをちゃんととろうとしていたのはどちらのプレイヤーか。
  • 巻き戻しをすることでより利益を得るのはどちらのプレイヤーか。

簡単にいうと、コミュニケーションをとるためにより尽力したのはAPだ。巻き戻しを行えば、APは手札を一枚公開してNAPに重要な戦略的情報を与えたことになる。[『巻き戻しの方法とその原理』](http://shirowork.com/backing-up-philosophy-and-methodology/)で述べた定義に従うと、これはまったくもって安全な巻き戻しではない。

決断の時だ!

今挙げたような例はよくあるものだ。コミュニケーション・エラーに対する「救済」としての巻き戻しの結果はだいたいこんな感じになる。もちろんこれも一つの例なので、巻き戻しをしたほうがうまくいく場合もある。そういったケースについては後述しよう。ところが実際の状況では、多少のコミュニケーション・エラーではジャッジは呼ばれないことが多い。ちょっとした行き違いなら自分たちで解決してしまうからだ。ジャッジが呼ばれたということは、かなり大きな問題があったか、少なくともそのまま進めることに同意できないプレイヤーがいるということだ。

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前回のGPプラハであった例を見てみよう。APは《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》を唱え、《先頭に立つもの、アナフェンザ/Anafenza, the Foremost》に+1/+1カウンターを乗せてNAPの裏向きのクリーチャーと格闘させようとした。NAPはその裏向きのクリーチャー、《棲み家の防御者/Den Protector》を表向きにして、《マグマのしぶき/Magma Spray》を手札に戻した。それからAPは《先頭に立つもの、アナフェンザ/Anafenza, the Foremost》にカウンターを示すさいころを置き、NAPは《棲み家の防御者/Den Protector》を墓地に置いた。その後、格闘で3点ダメージを受けている《先頭に立つもの、アナフェンザ/Anafenza, the Foremost》を倒そうとNAPは《マグマのしぶき/Magma Spray》をプレイした。そこでAPは、《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》をまだ墓地に置いていないためこれを解決していないと主張し、《棲み家の防御者/Den Protector》を対象に《究極の価格/Ultimate Price》を唱えた。

この状況にはいくつかの問題がある。 – APがさいころを乗せたことは《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》の解決を意味するのではないか。 – NAPが《棲み家の防御者/Den Protector》を墓地に置いたことはどうなるのか。 – 《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》がテーブルの中央に残っていることは、これがまだスタックにあることの根拠になるのか。

巻き戻したとしたら

《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》が解決されたのかどうかが、今回の要点だ。両者の認識が一致していた最後のポイントは、NAPが《マグマのしぶき/Magma Spray》を手札に戻したときだ。この時点では《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》はまだスタック上にある。

つまり、巻き戻しを行うということは、APが主張するとおり《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》がまだ解決されていないものとすることに等しい。巻き戻しをするということは、APに有利な裁定を下すということになる。APがやろうとしていたことができるんだからね!すでに述べたとおり、巻き戻しは現に一方のプレイヤーを引き立てることになる。

重要なのは、巻き戻しが一方のプレイヤーを有利にしてしまうことではない。コミュニケーション・エラーを正す手段として公平なものだとジャッジからしばしば誤解されていることだ。コミュニケーション・エラーが起きた責任がどちらにあるのかを考慮せずに行う巻き戻しは、処置を無作為に決定することと同等だ。

決断

さて先に挙げた問題だが、その答えはどれもそれ自体で根拠になるものではない。

  • ルール上は、《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》は解決が終わるまでスタック上にあるので、そこにあるからといって対応できるとは限らない。もっとも、プレイヤーが呪文を常時適切な領域に置いていることはほとんどないので、これをあてにするべきではない。
  • APが《先頭に立つもの、アナフェンザ/Anafenza, the Foremost》にさいころを乗せたことは、裁定を下すヒントになる。
  • NAPが《棲み家の防御者/Den Protector》を墓地に置いたこともヒントになる。

ジャッジが下す裁定の選択肢は次の通りだ。

  1. 《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》の解決は終わっており、《マグマのしぶき/Magma Spray》がスタックに乗っていることにする。
  2. 《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》はスタック上にあり、それに対応して《マグマのしぶき/Magma Spray》が唱えられたことにする。
  3. 《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》はスタック上にあり、《マグマのしぶき/Magma Spray》を手札に戻して再開する。

1はNAPに有利で、2と3はAPに有利となる。特に2の場合、NAPの不利益は大きい。

実際の場面では、以下の理由でNAPに有利な裁定を下した。

  • APの行動は《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》の解決に入ったことを示唆するものであり、NAPの対応が性急なものだったとも思えなかった。
  • APは《マグマのしぶき/Magma Spray》がプレイされたあとで、ゲームの状況が不明瞭であることを主張しただけだった。《棲み家の防御者/Den Protector》の誘発型能力に対応して《究極の価格/Ultimate Price》をプレイすることもできたし、さいころを乗せる前でもよかった。チャンスは何度もあったのにそうしなかったことから、そうすれば《先頭に立つもの、アナフェンザ/Anafenza, the Foremost》を守れるとAPはわかっていたのではないかと私は考えた。
  • 《巨大化/Giant Growth》のように事前にプレイする必要があるものとは異なり、《マグマのしぶき/Magma Spray》は《ドロモカの命令/Dromoka’s Command》が解決する前に唱える必要はなく、そうすることがいかに悪い戦略であるかをNAPは説いた。(APのプレイング・ミスにも見えるが、それはまた別のおはなし)

巻き戻しは慎重に!

前にも言ったが、巻き戻しは禁忌ではない。状況をどう改善するのが最適かを判断し、それに応じた決断を下すことが必要なだけだ。GPマドリード2015のケースを見てみよう。

APは《破衝車/Ramroller》と《議事会の自然主義者/Conclave Naturalists》で攻撃した。NAPが2体のクリーチャーで4/4の《議事会の自然主義者/Conclave Naturalists》をブロックすると、APはブロックされなかった4/3の《破衝車/Ramroller》に《大群の力/Might of the Masses》をプレイした。

NAPは驚いて、「4/3に?」 AP「はい」 NAP「本当に?」 AP「はい」 NAP「ではダメージ解決…6点くらって、そちらのクリーチャーは1体死亡ですね」 AP「いや、プレイヤーに4点と、そちらの2体が死亡です」

4/4をブロックすると口頭で示したとNAPは主張するが、APはそれを聞いていないという。両者は英語を話せるものの、どちらもネイティブではない。

その時の卓の状況は画像のようなものだった。

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巻き戻しを行うために、どちらのクリーチャーをダブル・ブロックしたのかが問題なので、ブロック・クリーチャー指定ステップのターン起因処理までさかのぼる必要がある。つまり、ブロックされたクリーチャーに《大群の力/Might of the Masses》をプレイすることを許容してしまうことになる。繰り返しになるが、巻き戻しのための巻き戻しは、一方のプレイヤーに有利な裁定を下すことを意味する。

2体のブロック・クリーチャーは《破衝車/Ramroller》の前に置かれているように見える。これについてNAPは次のように述べた。ブロック・クリーチャーの指定後にAPはクリーチャーを動かし、《大群の力/Might of the Masses》をプレイするに際して《破衝車/Ramroller》の上に重ねてあった《議事会の自然主義者/Conclave Naturalists》を横にずらしたという。この主張をAPも認めた。

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状況を鑑みて私が下した結論は次のとおりだ。

  • 戦略的な観点で言うと、4/3よりも4/4をダブル・ブロックするほうが理にかなっている。特に《破衝車/Ramroller》はサイズダウンする可能性があるので、次のターンには別のやり方でブロックできるかもしれない。+X/+1するパンプスペルをケアしつつ確実に4/3を倒したかったという可能性もあるが、今回はそうではなさそうだ。
  • ブロック・クリーチャーが指定されたときのカードの位置については両者の合意がとれている。位置関係だけではあいまいさが残るものだった。
  • 4/4をブロックしたという発言を除いて、両者の主張は全て一致している。

NAPは4/4をブロックしたのだろう。しかしAPは《大群の力/Might of the Masses》を唱えるために4/4を2体のブロック・クリーチャーの前から動かしたので、APの中でそれが定かではなくなってしまった。戦闘ダメージ解決時のAPの発言から、APはブロックされたクリーチャーにスペルを唱えたかったのだとわかる。

さて、どちらのプレイヤーも異なる選択をしたいようなので、ダブル・ブロックされたのは4/4とし、《大群の力/Might of the Masses》の対象はまだ選択されていないものとした。APは4/4を対象にとり、ゲームは再開された。

ああ、これも巻き戻しだ。しかしこの巻き戻しは、規定の判断よりも、状況調査の結果に依っている。興味深いことに、この新しい状況に基づいて行動していたのであろう両プレイヤーに、そうする機会があったということを除けば、これは部分的な巻き戻しによく似ている。繰り返しになるが、この点についても『巻き戻しの方法とその原理』で詳しく述べているので参照されたい。

覚えておこう!

  • コミュニケーション・エラーによる巻き戻しは、公平なものにはなりえない。どちらか一方に有利なものになる。
  • コミュニケーション・エラーは、どちらかのプレイヤーにより責任があることが多い。そのプレイヤーに有利にならないようにするべきだ。
  • 巻き戻しが最善の解決策だと思ったなら、GRVのときのようにするといい。

Kevin Desprez.

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