GP東京 フロアジャッジ・レポート

Whats Up, Docs?よりKevinDの“GP Tokyo Floor Judge Report”の翻訳です。おなじみKevinさんのジャッジ・レポート。スタンダードでよくあるルールの質問や、巻き戻しをすべきかどうかといった高度なトピックまで。

原文はこちら


非英語話者とのコミュニケーション

多くの点で日本は特別な国だが、そのひとつが言語だ。共通の言語も文字も持たない者にとっては比類のない挑戦となるだろう。このことについて少しばかり書こうと思ったが、すでにQ J Wong氏が相当な記事を書いてくれている(Judging in Japan (and Other Foreign GPs): A Non-English Grand Prix Guide for Judges(未訳))。どんなに言葉を尽くしても紹介しきれないクオリティだよ!

ルールの質問

《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》と《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar》

APは《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar》と、その能力でNAPから奪った《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》をコントロールしている。NAPが《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar》になんらかの除去呪文をプレイし、《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar》は死亡した。何が起こるだろう?《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》の能力は誘発するが… * 《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》の能力が誘発するには、「あなたがコントロールする」他のクリーチャーが死亡する必要がある。《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar》が死亡する瞬間には、まだコントロール奪取能力は機能している。そのため、《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》は《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar》が死亡したことをチェックすることができる。それに続いて、二つのイベントが発生する。《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》のコントロールがNAPに戻ることと、《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》の誘発型能力が誘発することだ。 * 誘発型能力のコントローラはAPだが、《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》が今やNAPにコントロールされているとしても、《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》を変身させることは可能だ。生け贄に捧げることとは異なり、あなたがコントロールしていないパーマネントをあなたが変身させることを妨げるルールは存在しない。

介入すべき?

注:APとNAPは共通の言語を持たないため、口頭でのコミュニケーションはなかったことを考慮してもらうと、このケースの理解がより深まるだろう。

状況

APは五つの土地をコントロールしており、戦闘前メインフェイズに《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》をプレイした。その後《ラムホルトの平和主義者/Lambholt Pacifist》と《森の代言者/Sylvan Advocate》を攻撃クリーチャーに指定した。NAPはとまどったように《ラムホルトの平和主義者/Lambholt Pacifist》を指し示した。APは《ラムホルトの平和主義者/Lambholt Pacifist》に視線をやると、それが変身していないことに気付き、謝罪してそれをアンタップした。

裁定

これはやっかいなジャッジ・コールだ。口頭でのコミュニケーションがなかったので、まずジャッジはNAPの意図を推し量ることから始めなければならない。《ラムホルトの平和主義者/Lambholt Pacifist》は攻撃できないと言いたかったのだろうか?それとも何か他のことを言いたかったのだろうか?だとしたらそれは何か?次に、もう一つの問題が浮上してくる。ジャッジはこの問題に介入すべきだろうか?

第一に、NAPが《ラムホルトの平和主義者/Lambholt Pacifist》は攻撃できないと言ったのだとAPが思い込んでいるのは、APの反応からわかる。ちょうど私もそのときこのゲームを見ていたが、傍からもそのように見えた。さらに、一緒に見ていたジャッジのJeff Morrow氏も私を振り返ってこう言った。「おい、彼は何をしているんだ?」以上の要素は『NAPの行動は「《ラムホルトの平和主義者/Lambholt Pacifist》は攻撃できない」を意味していた』というひとつの結論に集約される。

もう一つの問題の答えは、一つ目の結論から自ずと導かれる。「《ラムホルトの平和主義者/Lambholt Pacifist》は攻撃できない」とNAPが指摘したのなら、それは誤った供述だ。誤った類推情報を述べることは「意思疎通規定抵触行為」に該当する違反だ。プレイヤーが正しくない発言をした場合、それが秘匿情報や未来のゲームの状況に関するものでない限り、ジャッジが立ち入って訂正する必要がある。ただし、発言内容が正しいけれど不完全な場合は注意が必要だ、これは不正ではないので、介入してはならない。

意図的な不正行為ではないかの検証も行われた。NAPに《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》の存在を思い出させた際、それが他のクリーチャーからすこし離して置かれていたことと、NAPの身振りから、我々はこれが善意の過失だったと判断した。

巻き戻すべきか?

状況

APはライフ10、NAPは18だった。APは《スレイベンの検査官/Thraben Inspector》を唱え、すぐに手掛かり・トークンを生け贄に捧げてカードを引いた。少し考えた後、攻撃とブロックのシミュレーションを行った。APとNAPはそれぞれ9体と7体のクリーチャーをコントロールしている複雑な盤面だった。しばしの後、9体すべてでの攻撃を宣言した。それらはすべて人間・クリーチャーで、そこにはさきほど唱えたばかりの《スレイベンの検査官/Thraben Inspector》も含まれていた。

NAPはちょっと考えて、ブロック・クリーチャー指定前に《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》を唱えた。APはそれに対応して《オジュタイの命令/Ojutai's Command》を唱え、カウンターしつつ墓地の《サリアの副官/Thalia's Lieutenant》を戦場に戻した。APが自分のクリーチャーに+1/+1カウンターを乗せているとき、《スレイベンの検査官/Thraben Inspector》は攻撃できないことにNAPが気がついた。

これは間違いなく「その他一般のゲームルール抵触行為(GRV)」だが、興味深い点がある。ゲームの巻き戻しを行うかどうかだ。

理論

「マジック違反処置指針(IPG)」によると、これは部分的修復が可能な状況ではないので、選択肢は二つだ。状況をあるがままに保つ、つまり召喚酔いしているはずの《スレイベンの検査官/Thraben Inspector》を攻撃しているままにしておくか、攻撃クリーチャーの指定まで巻き戻すかだ。状況をそのままにしておくのがデフォルトの解決策だとして、巻き戻すことのが可能かどうかを検証してみよう。巻き戻す場合の手順は次の通りだ。

裁定

いつもこのブログで言っている(未訳)ように、良い巻き戻しが行われたゲームの状態は、部分的修復によってもたらされるだろう結果にとても近いものになる。今回のケースは、全くもってこのとおりではない。 NAPは手札から《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》を晒してしまったし、APもまたNAPは知らなかった《オジュタイの命令/Ojutai's Command》を晒した。これは大いに影響があることだ。いま巻き戻すと、APが《オジュタイの命令/Ojutai's Command》を先に唱えてクリーチャーを強化する必要に迫られるまで、NAPが《大天使アヴァシン/ArchangelAvacyn》を唱えないことは不当ではなくなるだろう。《オジュタイの命令/Ojutai's Command》と《サリアの副官/Thalia's Lieutenant》のシナジーはNAPのブロック・クリーチャー指定において考慮すべき重大な要素になるだろう。

APが違反を犯した張本人であるにもかかわらず、巻き戻しを行わずゲームの状態を修正しないことは、APに有利になってしまう。しかしNAPも、違反に気づくだけの充分な時間があったにもかかわらず見逃していたという過失がある。今回のケースでは、巻き戻しを行うことは極めて危険である。ゲームを決定づけかねない呪文が二つも公開されてしまっており、それらを手札に戻すことはゲームの行方を根本的に変更しかねない。

** 巻き戻しによってゲームの状況が変わってしまうことはあってはならない。巻き戻しを行えばゲームを歪めてしまうと感じたなら、巻き戻さずそのままにしておくべきだ。 **

GRVかHCEか

状況

APはNAPのトークンを対象に《石の宣告/Declaration in Stone》を唱えた。NAPはサイコロをひとつ戦場に置いた(とNAPは主張するが、APはそれを認めていない)後すぐにそれを取り除き、2マナ出してカードを一枚引いた。そしてNAPが(アンタップステップの)アンタップをしようとしたところでAPがジャッジを呼んだ。

どの違反に該当するか

** これがGRVになるか「非公開カードに関する誤り(HCE)」になるかは、次の要素によって決まる。何らかの違反もしくは対戦相手からの許可が、ドローの前にあったかどうかだ。**これはとても簡単な判断基準だが、今回のケースはきわどいので注意が必要だ。

第一に、APの許可なくNAPがドローをしたことは両者とも認めている。これで選択肢がひとつ消えた。第二に、《石の宣告/Declaration in Stone》によって追放されたのがトークンなら、調査はできないはずだ。NAPがそれに気づいていなかったのは明白である。APが呪文をコントロールしており、NAPはその指示に従った。ゆえにNAPが手掛かりトークンを戦場に出したのなら、両プレイヤーはGRVに該当する違反を犯したことになり、HCEとは見なされない

しかし、トークンを戦場に出したかどうかという点で、意見の相違があった。もし出されていなかったのなら、APはNAPのGRVに気づく余地がなかったとして、これはHCEに該当する違反になる。

話の食い違い

NAPは確かにサイコロを戦場に置いたと主張するが、APは見ていないと言う。今回の《石の宣告/Declaration in Stone》ではNAPは調査を行わないはずなので、NAPが能動的にトークンを示しでもしないかぎり、APは違反に気づくことができない。サイコロが置かれたことをAPは知らなかったと捉えるのが妥当なのは明らかだ。

とはいえ、APが嘘をついている可能性もある。どちらが本当なのかの証拠もないし、NAPが直ちに手掛かり・トークンを生け贄に捧げたと言うのは非合理的ではない。NAPが本当にサイコロを戦場に置いていたとしよう。それが手掛かり・トークンを表していると、すぐにわかるだろうか。卓上に置かれたサイコロは様々な意味を持つ。さっきまであったパーマネントの忘れものかもしれないし、《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》で-2/-0したことを示すマーカーとして使うプレイヤーもいる。

裁定

あらゆる検討の末、私は結論を下した。手掛かり・トークンが戦場に置かれ、APがそれを理解する充分な機会があったと考えることは、およそ筋が通るものではない。あらゆるゲームの行動がせっかちに行われていたことも加えて、NAPにHCEで違反という裁定を出した。追加措置としてNAPの手札をAPに公開して1枚選ばせ、それをライブラリーに加えてシャッフルした。

仮にこれがGRVだったなら、私がNAPの手札からカードを一枚無作為に選んで、ライブラリーのトップに置くだけだ。

補足

NAPがすぐにアンタップ・ステップに移行したという点もまた注意すべき興味深い点だ。何もプレイするものがなかったので、「ドロー・ステップのドローを先にしてしまったのだな」と考えてしまいがちだが、これは全く持って誤りだ。裁定のための扱いとしては、インスタントや瞬速を持つ呪文を唱えたのか、そうでない呪文を唱えたのかという違いと変わらない。そういうわけで、HCEなのかGRVなのかを決定したことは、これと大いに関連がある。

** 最も重要なことは、どの違反に該当するかを見極めることだ。最適な、最も簡単な、あるいは自分好みな解決策を前後関係から推測するようなことはしてはいけない。**

Kevin Desprez.