GPデトロイト アピールジャッジレポート

Whats Up, Docs?よりKevinDの“GP Detroit Appeals Judge Report”の翻訳です。GPで実際にあった質問や裁定の解説しています。特にコミュニケーションのすれ違いに関する二つの事例は注目です。

原文はこちら


ルールに関する質問

《広がりゆく海/Spreading Seas》と伝説の土地

《広がりゆく海/Spreading Seas》がついた《ウギンの目/Eye of Ugin》をコントロールしているAPが、別の《ウギンの目/Eye of Ugin》をプレイした。

《広がりゆく海/Spreading Seas》はサブタイプを変更し(あるいは加え)、それによってエンチャントされている土地は「(T):あなたのマナ・プールに(U)を加える。」を得る。しかし、その土地の名前や特殊タイプを変更するわけではない。APは同じ名前の伝説のパーマネントを二つコントロールしているので、一方を墓地に置かなければならない。

《難題の予見者/Thought-Knot Seer》の誘発型能力

APは《難題の予見者/Thought-Knot Seer》を対象に《変位エルドラージ/Eldrazi Displacer》の能力を起動した。能力の解決時に《難題の予見者/Thought-Knot Seer》が明滅するので、プレイヤーが優先権を得る前に両方の誘発型能力が(同時にではないが)誘発する。このようなケースでは、能力が誘発した順番は考慮しない。複数の能力が誘発してスタックに積まれるのを待っているだけだ。《変位エルドラージ/Eldrazi Displacer》の能力の解決後に、《難題の予見者/Thought-Knot Seer》のコントローラーは両方の誘発型能力を望む順番でスタックに積むだけだ。

《現実を砕くもの/Reality Smasher》の誘発型能力

NAPがコントロールする《現実を砕くもの/Reality Smasher》を対象にAPが《四肢切断/Dismember》を唱えた。NAPは少し待った後こう言った。「ディスカードしませんでしたね。《四肢切断/Dismember》は打ち消されました。」

これは誤りである。《現実を砕くもの/Reality Smasher》のコントローラーには、その能力を誘発忘れしていないことを明確に示す責任がある。NAPがそれを示した時点で、APにはまだディスカードする機会がある。ところで、仮にAPの手札が残り1枚しかなく、それが《スフィンクスの啓示/Sphinx’s Revelation》だったとしよう。APはこれを、NAPの発言に対応して唱えることができるだろうか?正解はNOだ。この場合、もう誘発型能力の解決に入っていると考えられる。APは《現実を砕くもの/Reality Smasher》の能力が誘発してスタックに乗っていると仮定して行動していなければならない。NAPが自分の誘発忘れを証明するまでは、それはスタック上にあるのだから。従って、NAPがAPにディスカードを要求した時、それはすでに誘発型能力の解決に入っていることを意味する。

注目の裁定

非公開カードに関する誤り(HCE)による巻き戻し

APは《古きものの活性/Ancient Stirrings》で間違えて6枚のカードを見てしまった。無色のカードを1枚公開して手札に加え、残りの5枚をライブラリーの一番下に送った。その後ターンを終了してから、AP自身が気づいてジャッジを呼んだ(よって不正行為ではないと直ちに判断された)。ライブラリーはシャッフルされておらず、手札に入れたカードも公開していたので、修正は簡単だった。その6枚を対戦相手に公開して、山札に戻す1枚を選んでもらい、APには残った5枚から手札に加えるカードを選んでもらった。

変更するには遅すぎる

APは残りライフ1で、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》《ウギンの目/Eye of Ugin》《エルドラージの寺院/Eldrazi Temple》《カープルーザンの森/Karplusan Forest》から《世界を壊すもの/World Breaker》を唱えた。その後の二人の意見が食い違った。

二人の主張が異なってはいたが、私は双方とも嘘はついていないと思った。おおよそ同じくらいのタイミングでそれらは起こったのだろう。このような状況では、以下の点について評価することが鍵となる。APは唱え終わっていたとNAPが思うことは合理的か、あるいは我々が急かしてしまったのか。また、もしAPが考え直しているところだったなら、どうして間違いに気づけたのか。そこで私はまず、カードが手札から出てきた時点で土地はタップされていたのかを確認した。こういったケースではこの情報が大きなヒントになるのだが、今回は確実なことは分からなかった。次に、《世界を壊すもの/World Breaker》を唱えた時の誘発型能力の宣言はなされていたかを確認したが、両者ともそれはまだだったと答えた。

これは、確かなことは分からないけれども決定を下さなければならないケースだ。おそらく、あらゆることが同時に起こったのだろう。NAPにとって、APが唱え終わったと判断する材料がいくつもあったのだと最終的に私は感じた。土地がきちんとタップされていたことには両者が合意していた(実際にどのように行動したのかをAPに再現してもらい確認した)。NAPが最初に口を挟んだことがきっかけでAPはミスに気づいたのだと私は考えた。よってこの件はAPのミスとし、《カープルーザンの森/Karplusan Forest》から緑マナを出すよう裁定を下した。

できないことをしようとする

ターン終了時、NAPは《罠の橋/Ensnaring Bridge》を対象に《アカデミーの廃墟/Academy Ruins》の能力を起動した。それに応じてAPがこう言った。「《罠の橋/Ensnaring Bridge》がライブラリートップへ行くのに対応して、《アカデミーの廃墟/Academy Ruins》を対象に《幽霊街/Ghost Quarter》を起動するよ。」NAPは困惑してジャッジを呼んだ。

APが言ったことは起こり得ないので、これは何の意味も持たない。APに発言の意図を尋ねたところ、同じことを繰り返し述べるだけだった。《アカデミーの廃墟/Academy Ruins》の能力に対応して《幽霊街/Ghost Quarter》を起動したいのかと(これに戦略上の意義があるかは疑問だが、彼の発言にもっとも近いと判断した)尋ねると、否定的な答えを示した。最終的に我々は、能力の解決中は何もできないことを彼にはっきり伝えることにした。《幽霊街/Ghost Quarter》の能力を起動出来るのは、能力が解決される前か、解決された後だけだ。その後APは、すでに「どうぞ」と言ってしまったのだが、能力の解決後にまだ何か行動する機会はあるのかと尋ねてきた。その時我々はようやく彼が伝えようとしていたことを理解した。ターンがNAPに渡る前に行動できるか確認したかったのだ。蛇足だが、NAPは《幽霊街/Ghost Quarter》で土地を探さないことを選び、次のターンに無事《罠の橋/Ensnaring Bridge》を引いた。

コミュニケーション・エラー

状況

APは《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》を唱え、解決された。NAPの《臓物の予見者/Viscera Seer》を対象にする前に、《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》に軽く触れた。その後さらに、《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》の能力に対応して《霊気の薬瓶/AEther Vial》から《コーの空漁師/Kor Skyfisher》を出して《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》を手札に戻し、対象を永久追放しようとした。NAPは対応して《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》を生け贄に捧げ、その誘発型能力を解決した。その後APが言った。「《臓物の予見者/Viscera Seer》を追放してくれる?」そこで両者は、異なる認識に基づいて一連の行動をとっていたことに気づいた。APは《臓物の予見者/Viscera Seer》を対象にしたつもりだったが、NAPは《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》が対象になったと思っていたのだ。

どちらか一人がわるいのか?

最初に確認したのは、APが対象の選択時にミスをしたのではないかということだ。APは最初に《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》に触れたが、それは軽いものだったということは両者とも認めた。APが言うには、彼はその後《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》を《臓物の予見者/Viscera Seer》の方へ動かし、「予見者。」と宣言したという。しかしNAPはそれを聞いていないと主張した(※訳注)。

APの視点からすると、もうすぐ《臓物の予見者/Viscera Seer》が居なくなるのだから《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》を生け贄に占術することは理にかなっている。状況的にブロッカーとしても役に立たないので、コンボパーツを探す方が有効だろう。NAPの視点からすると、単純に《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》を追放されたくなかった。このような状況だったので、両者がコミュニケーション・エラーに気付くのに時間がかかったのも無理はない。両者が話す事実によると、あらゆる行動がわりと簡潔になされていた。また、嘘をついている証拠もなかったので、対象は《臓物の予見者/Viscera Seer》だったという裁定を下した。少々の困惑が見受けられたので、誤ったゲームの状況に基づいたNAPの選択を巻き戻さない理由もないとした。ここからは、これを巻き戻すのが簡単かどうかという点がポイントだ。

話を進める前に、今一度注意喚起をしておきたい。コミュニケーション・エラーがあったからと言って、いつもゲームを巻き戻すというわけではない。巻き戻しは、しっかりと判断を重ねた上で検討されるものであり、標準的な解決策ではない。この厄介な話題についてはこちらの記事(Miscommunication? You need to make a decision!)も参照されたい(リンク先未訳)。

巻き戻し?

巻き戻す必要がある要素はいくつかある。次のとおりだ。

  1. NAPの占術1
  2. 《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》を戦場に戻す
  3. 《コーの空漁師/Kor Skyfisher》を手札に戻す
  4. 《霊気の薬瓶/AEther Vial》をアンタップする

《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》の能力がスタックに乗り、対象が宣言されるところまでゲームの状況を巻き戻す必要がある。2番目と4番目は至って簡単だが、1番目と3番目はもう少し複雑かもしれない。だが、占術を巻き戻すのは見た目より難しくはない。占術したカードがどこへ行ったのかを両プレイヤーに確認して戻し、ライブラリーのランダムな部分を切り直せばいい(他の占術等で固定された部分がないかは要確認)。占術したカードはライブラリーにあるのだから、悪くてもトップからボトムに移動しているだけなので、100%このように処理することが可能だ。今回の巻き戻しで一番厄介なのは、《コーの空漁師/Kor Skyfisher》をAPの手札に戻すことに違いない。確かにAPはゲームを動かす非公開情報を晒したし、NAPがそれに対応することも認めた。しかしながら、これらはコミュニケーション・エラーによる誤解に基づいて行われた行動ではない。《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》の能力をスタックに乗せた後、APは優先権を保ったまま《霊気の薬瓶/AEther Vial》を起動したのだ。非公開情報が晒された時の巻き戻しは、常に慎重に扱わなくてはならない。これがゲームの流れを変えてしまうこともあるのだ。今回は充分に危険がないと判断し、《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》の能力がスタックに乗るところまで巻き戻すことにした。

その後

APは誘発型能力の対象を《臓物の予見者/Viscera Seer》だと明言した後、《霊気の薬瓶/AEther Vial》を起動して《コーの空漁師/Kor Skyfisher》を戦場に出して《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》を手札に戻した。NAPは《臓物の予見者/Viscera Seer》だけを生け贄に捧げて占術1を行い、ゲームは再び進行した。これは概ね部分的な修正のようであった。そのためこの巻き戻しはとても良くできたものだと感じた。巻き戻しについてもっと詳細な記事はこちら(Backing up : Philosophy and Methodology)(リンク先未訳)。

その後2

Eskil Myrenbergと話し合い、入念な考慮を重ねた結果、より良い方法があったことが分かった。《霊気の薬瓶/AEther Vial》は起動された状態で、《悪鬼の狩人/Fiend Hunter》の能力の対象を改めて明示する。このポイントからゲームを再開するのだ。確かにAPは《臓物の予見者/Viscera Seer》を対象にしたいとずっと訴えていたので、その考えを変える機会があるのはおかしな話だ。また、《霊気の薬瓶/AEther Vial》を起動するまで優先権を放棄していないので、そこまでは修正する必要もなかったというわけだ。その後NAPは優先権を得る。今やNAPは、別のクリーチャーが対象だったという異なる情報を持っているので、異なる方法で対応する機会が与えられてしかるべきだ。総じて、大した違いではないものの、非公開情報がゲームの結果を変えてしまうことを潜在的に予防できるので、危険はより少ないだろう。

注目のジャッジ

(この節の翻訳は割愛します。)

Kevin Desprez

訳注:原文「AP claims he then moved the Fiend towards the Seer and said “Seer” which AP indicates he didn't hear.」ですが、2回目のAPはNAPの誤りと判断しました。