ジャッジへの正しい質問の仕方

The Battlefield ForgeよりZak Turchanskyの“Asking the Right Questions”の翻訳です。
ジャッジコールの質問に答えることが戦略的アドバイスになりかねないものだった時、あなたはどうしますか?イベントで実際にあった二つのケースを取り上げ、そこでZak Turchansky氏が出した裁定と、その問題点について述べています。

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この週末私がジャッジとして参加したイベントは私の5年以上のジャッジ経験の中でも初めての規模のものだった。2月6日、アルバータ州のエドモントンにあるFace to Face Gamesが主催した大会だ。とてもにぎやかなイベントで、約130人のプレイヤーと5人のジャッジが参加した。このイベントでの私にとって最も大きな収穫は、プレイヤーが思い通りの回答を得られなかった、ある二つのジャッジコールだ。プレイヤーの思い通りにならなかったのは、戦略的アドバイスとルールのアドバイスを混同しないようにというジャッジの義務が理由だとヘッドジャッジは言った。

「どうぞ、して下さい。だめです、それはあなたの思い通りにはなりません。」

ジャッジ報奨版《呪文滑り/Spellskite》のフレーバーテキスト

そのジャッジコールの時の状況については記憶が曖昧だが、どうにか思いだそう。APは《ぎらつかせのエルフ/Glistener Elf》で攻撃しており、NAPは《呪文滑り/Spellskite》をコントロールしていた。ブロッククリーチャーの指定前にAPが《ぎらつかせのエルフ/Glistener Elf》を対象に《使徒の祝福/Apostle’s Blessing》を唱えたところでNAPがジャッジを呼んだ。NAPはその大会でも有数の熟練のプレイヤーで、プロツアーにも何度か参加していた。そのため彼が簡単な(と私は思った)ルールの質問でジャッジを呼んだことが驚きだった。「《使徒の祝福/Apostle’s Blessing》を対象に《呪文滑り/Spellskite》の能力を使えますか?」と彼は質問した。これを聞いて私の中のジャッジ・アラームはオフになった。「〈任意の呪文や能力〉を対象に《呪文滑り/Spellskite》の能力を使えますか?」に対する答えは常に「イエス」だ。「〈任意の呪文や能力〉の対象を変更するために《呪文滑り/Spellskite》の能力を使えますか?」に対する答えは状況による。ジャッジにとって、これは戦略的アドバイスを与えたくない典型的なケースだ。もしプレイヤーが《呪文滑り/Spellskite》について詳しく知らなくて、最善とはいえないものの適正なプレイをしていたとしても、特に競技RELにおいてこれはプレイヤーの問題であって、ジャッジが関与することではない。

戦略的アドバイスを与えたくないので、彼からより良い質問を促すために、「要するに何を聞きたいのですか?」と私は聞き返した。彼は先と概ね同じことを繰り返し述べた。対象の変更や移し変え、《使徒の祝福/Apostle’s Blessing》の対象が 正かどうかといったことについては言及しなかった。それから彼はさらっと「大した問題じゃないんだ」と付け加えた。それは、この質問がゲームに直ちに大きな影響を及ぼすものではないのだという意味に聞こえた。だから私は「イエス。《使徒の祝福/Apostle’s Blessing》を対象に《呪文滑り/Spellskite》の能力を起動できます。」と答えた。すると彼はすぐさま《呪文滑り/Spellskite》の能力を解決し、《使徒の祝福/Apostle’s Blessing》の対象を不適正な《呪文滑り/Spellskite》に変更してしまった。そうしてそのターンが終わってから、私は何が起こったのかを理解した。NAPはもう一つ毒カウンターを得るはずだ。だが私はゲームの状況を修正せず、プレイヤーに情報を与えることもせず、立ち去った。「大した問題じゃないんだ」からね。

さて、この問題について詳しく見てみよう。こういった裁定出し方をすると、私の答えに基づいて予想した結果をプレイヤーが得られなかった挙句、ジャッジがゲームに介入する必要が出来てくるということはよくある。しかしながら、私は盤面を理解するのに充分な時間をとらなかった。この時私はただ、先に説明した盤面についてのみ正確な事実を把握していただけだった。この裁定について、少なくとも四つのミスを私は犯した。

  1. 答えを述べる前に、影響が及ぶであろう盤面を理解しきれていなかった。もしNAPが《使徒の祝福/Apostle’s Blessing》を移し変えようとしたら盤面がどうなるのかを予想し、理解するべきだった。そして、ゲームが不正な状態になった時にそのことを指摘できたはずだ。
  2. 実際「大した問題じゃない」のだと思ったが、これがよくなかった。プレイヤーの言動にジャッジが影響されてはいけない。プレイヤーがルール上不適正な行動をしようとしている時にはなおのことだ。さらに言うと、このようにジャッジに影響を与えることがあるとプレイヤーは理解しているものだと分かっていたからこそ、私のジャッジ・アラームをオンにするべきだった。
  3. 裁定をチェックしなかった。理想的にはゲームの状況を見守り続けるべきだが、例え目を離した後であっても、裁定の正しい説明をするべきだし、NAPはもう一つ毒カウンターを得るよう訂正するなどして、ゲームを適正な状況に戻す必要がある。
  4. NAPは熟練のプレイヤーなので、なぜそのように能力を使えると思ったのかをもっと質問するべきだった。実は彼は不可能であると知りながら、誤審を期待していた可能性も否めない。 「大した問題じゃない」という言葉で彼は不正をしているのではないと私は思ったのだが、いくつか追加の質問をして勤勉に努めたって誰も傷つきやしない。

適正かどうかには結果は含まれない

こっちのケースは少し上手くやれた。大会の終盤、先刻のジャッジコールで最善の処理を行えなかったことで私は自分自身にまだ少し苛立っていた。APはクリーチャー化した《変わり谷/Mutavault》と2体の《メロウの騎兵/Merrow Reejerey》で攻撃していた。NAPは《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》とタップ状態の《変位エルドラージ/Eldrazi Displacer》をコントロールしていた。NAPが「先制攻撃のダメージに対応できますか?」と尋ねてきた。この時私は、彼が正しい質問をしていると考え、「先制攻撃のダメージが与えられた後に両プレイヤーは優先権を得ます。」と答えた。すると彼は「OK。今から私はこのようなプレイをしたいと述べるので、その行動が適正かどうか教えてくれますか?」と返した。そこで私は自問した。『ああ、良いだろう。プレイヤーは今から尋ねることについて確認しようとしている。簡単なことだ。』私は盤面を一瞥して、それが理にかなっていると判断した。彼は《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》で《メロウの騎兵/Merrow Reejerey》をブロックし、先制攻撃のダメージを与えた後にもう一体の《メロウの騎兵/Merrow Reejerey》を明滅させ、ブロックした方を2点のダメージを負った2/2にしたいのだ。そして彼はまさにそうできるかどうかを尋ねてきた(その結果《メロウの騎兵/Merrow Reejerey》が死亡するかをポイントとしていた)。彼の発言に不正なものはなく、全ては良さそうに見えた。

前回とは異なり、私は裁定を下した後もテーブルについて、想像した通りに事が進むかを確認した。それから《変位エルドラージ/Eldrazi Displacer》のテキストを再確認して、その挙動が《霧への変化/Turn to Mist》よりも《一瞬の瞬き/Momentary Blink》に近いものだということに気がついた。両プレイヤーは、私が最初に思い込んでいた挙動に基づいてゲームを進めており、《メロウの騎兵/Merrow Reejerey》は一体墓地に落ちていた。私は直ちに彼らのゲームを中断させ、《メロウの騎兵/Merrow Reejerey》は死なないことを伝えた。なぜなら、《変位エルドラージ/Eldrazi Displacer》の能力の解決中、もう一方の《メロウの騎兵/Merrow Reejerey》が追放領域にある間にはプレイヤーは優先権を得ないからだ。誰も優先権を得ないなら、《メロウの騎兵/Merrow Reejerey》が致死ダメージを負っている時点では状況起因処理はチェックされない。

NAPは動揺して、私の裁定が彼の行動に影響を及ぼしたことを主張した。私は彼の「適正か」という問いに対して正しい答えを与えたが、結果についてはその限りではないことを告げた。両プレイヤーは何が起こったのかを理解してはいなかったが、私の裁定を受け入れ、ゲームの状況を正しいものに修正した。

得られた教訓

これら二つの裁定はプレイヤーがジャッジに質問する時に使われた特定の言葉が鍵となっている。戦略に影響するであろう部分を考慮して裁定を柔軟にすることをせず、質問から切り離して、ただルールについてのみ答えるのは危険だ。二つ目のケースは一つ目よりもずっと上手くやれたと思っている。とりわけ、裁定を出した後もテーブルについてその後の状況を見守り、ルールに関する重要な誤解を見つけられたことは大きい。とはいえ、新しいカードに関する自分の記憶を過信せず、裁定を出す前に《変位エルドラージ/Eldrazi Displacer》のテキストを読む時間をちゃんと取るべきだった。この事件で私は、隙間時間でなんとかするのではなく、もっとルーリングに対する見識を深める覚悟を決めた。

一つ目のケースで挙げたこれ以外の問題点は、二つ目のケースに当てはめることはできない。しかし将来のジャッジにとって良い学習のポイントとなるだろう。何が起こるかを完璧に理解していないのなら、盤面の状況に影響を及ぼすような裁定を出してはいけない。ジャッジの裁定に影響を及ぼすようなことをプレイヤーに言わせてはいけない。これは、プレイヤーは裁定に影響を一切与えるべきではないという意味ではないことに注意してほしい。プレイヤーの発言は真実からは程遠いこともあるが、しばしば必要なものなのだ。そして、なにかが正しくないと感じたら、プレイヤーに質問して確認しよう。質問をすることは悪いことではないし、我々ができる、そしてすべき調査の、もっとも小さな形なのだ。