プロツアー『ゲートウォッチの誓い』 ヘッドジャッジレポート

Whats Up, Docs?よりKevinDの“PT Atlanta Head Judge Report” の翻訳です。プロツアー『ゲートウォッチの誓い』で起きた、ルーリングや裁定において注目すべき事例を紹介しています。

原文はこちら


「ゲームにおいて何かがおかしいと感じたら、まずゲームを中断させよう。考えるのはそのあとだ。」 Guillaume Beuzelin ジャッジの基本となる原則にはかなりの数の格言がある。(こちらの記事(未訳)の“Judges of Note"の段落にもジャッジの原則について良い格言がある。)

Taoが《魂の洞窟/Cavern of Souls》のマナを使って(《ウギンの目/Eye of Ugin》でコストを軽減しながら)《エルドラージの寸借者/Eldrazi Obligator》をプレイし、寸借者の誘発型能力のマナを支払おうとした時、使えるのは《島/Island》と《蒸気孔/Steam Vents》しか残っていなかった。これでは誘発型能力のマナを支払えないのだが、彼は気づかずプレイし、またScott-Vargasもそれに気づかずクリーチャーのコントロールを渡した。

私はそのテーブルについており、そのとき何かおかしいと“感じた”。二人のプレイングは全体的にかなりすばやく、またこの《エルドラージの寸借者/Eldrazi Obligator》はゲームを決定付けるものだった。そのため私はゲームが投了されるまでに"何が"おかしいのかを見つけることができなかった。私の脊髄反射のような直感が、何かがおかしいと警告した。しかしその情報を神経から脳に伝えるのに少々時間がかかり、その結果何が起こったのかを私が判断できた時はすでに手遅れだった。 このような状況では、「ゲームを止めてください。」と速やかに言い、その後に何をおかしいと感じたのかを探すべきだった。 ゲームを監視しているときは、行動をおこすことは考えることよりも時に有効である。(余談だが、組織的な問題の解決においてはこれはあまり当てはまらない。)

誤りが発生したものの、すでに投了がなされていたので、ゲームを巻き戻すことはできなかった。そこで私は、これが故意の違反ではないかを検討した。全体的にプレイが手早く行われていたことを別にしても、Taoは自分のプレイにもっと慎重になれたはずだ。《蒸気孔/Steam Vents》から《エルドラージの寸借者/Eldrazi Obligator》をプレイし、誘発型能力の支払いのために《魂の洞窟/Cavern of Souls》を立てておくことはできた。Scott-Vargasはカウンターを使っていなかったのだから、《魂の洞窟/Cavern of Souls》を使わなくてよかったのだ。よってこれが故意の違反ではなかったと判断し、また投了がなされていて巻き戻せなかったため、状況はそのまま進めることとして、Taoにはその他一般のゲームルール抵触行為(GRV)で警告を出すのみとした。

注目のルーリング

「OK, Go!」

あるプレイヤーがマリガンを1回し、占術してカードをボトムに送った後、「OK, Go!」と言った。彼の対戦相手は躊躇してジャッジを呼んだ。「OK, Go!」と言った彼はこのゲームの先攻だったのだ。私は熟慮した結果、彼に土地をプレイしてもよいという裁定を下した。

誰が先攻か分からなくなった時や、すこしばかり意識がお留守になってしまった時にどのような裁定を下せばよいか、その時私とTobyは議論した。明確な意図があって何もプレイしない場合を除いて、プレイヤーは第一ターンに土地をプレイできるよう一貫して裁定を下すべきだというのが我々二人の認識だ。ゲームはまだ始まっていないし、特に何の情報もない…土地のプレイを許可しない理由はどこにもない。

膝の上のカード

2016-02-05-13.59.12-e1456063316686 故意の違反でなくとも、膝の上にカードがあるということはあり得る。フェッチランドの解決中にライブラリーから落としてしまった場合などだ。これを解決するのは簡単だろう。

一方シャッフル中にライブラリの一部が手札の上に落ちてしまったこの写真の状況は非公開カードに関する誤り(HCE)の好例だ。非公開領域にあったカードが、別の非公開領域に移動したのだ。従って、手札だったカードとライブラリーから落ちて混ざったカードを対戦相手に見せ、過剰な枚数分だけカードを取り除かせる。たとえ、手札の上だけでなく膝にもカードが落ちていたとしても、それを考慮する必要はない。なぜなら、手札に触れることなくライブラリーから直接落ちたものである可能性が高いからだ。

写真の状況を見て、元あった手札は何枚だと思う?2枚、それとも4枚?正解は3枚だということが、カード・カウンティング・テクニック(詳細はこちら(原文)(訳文))によって分かる。ただ確認してみただけなんだが、このテクニックが使えるものだということがはっきりしたね。

HCEとGRVと、公平であろうとすることの危険性

#### 状況

APは手札に《残忍な切断/Murderous Cut》を持っている。彼はアップキープ・ステップに《ゴブリンの太守スクイー/Squee, Goblin Nabob》を手札に戻し、ドロー・ステップに《壌土からの生命/Life from the Loam》を発掘しようとした。彼は《壌土からの生命/Life from the Loam》をテーブルの中央に持って行き、ライブラリーの上から3枚を公開し(赤のカードが1枚と、土地が2枚だったと彼は主張した)、これらもテーブルの中央に置いた。そして《壌土からの生命/Life from the Loam》を手札に加えようとして、誤って公開した3枚を手札に加えてしまった。

その3枚をNAPがはっきり覚えていなかったため、判定はやや複雑なものになった。《燃焼/Conflagrate》と《幽霊街/Ghost Quarter》までは確かだが、3枚目を覚えていなかったのだ。

違反行為の決定

両者が、カードが公開されたことは合意しているため、そのカードは周知のものであり、例え対戦相手がその一部を覚えていないと主張しようとも(この件は後述する)、このケースはHCEにはならない。よってこのケースはGRVか故意の違反のどちらかになる。

私はどちらの側にも、故意の違反があるとは思わなかった。

・APは《ゴブリンの太守スクイー/Squee, Goblin Nabob》の隣に黒のカードがあり、反対側の隣に発掘で落とした3枚のカードを入れたということを一貫して主張した(その位置関係については対戦相手も認めていた)。しかし私は手札内でのカードの位置は考慮しなかった。実際問題、それらのカードが入れ替えられていないという証拠はなかったし、私が現場に到着するまでには複雑な小細工を弄するに足る時間があった。

・NAPは3枚目のカードが何であったかについては不確かだが、3枚のうち1枚は赤のカードだったと覚えていた。従って、APが元から手札にあったと主張するカードのうち《ゴブリンの太守スクイー/Squee, Goblin Nabob》ではない一枚が黒であったため、NAPはこの3枚の色については認識していると推測した。

・NAPが3枚目のカードを覚えていないということについて、嘘を言っているとは思わなかった。2枚は本当に土地だったのだろうと私は思った。土地に対しては通常関心が低く、戦略的側面でも、特にAPが使っていた 《ゾンビの横行/Zombie Infestation》で土地を捨てていくデッキにおいてはなおのことだ。総じて、NAPは土地カードに意識を向けていなかったと私は判断した。

故意の違反ではないと結論付けたので、これはGRVになる。発掘で落とした3枚のカードについてAPが嘘をついているとは思わなかったので(カードの色がカギになった)、私はAPを信用し、2枚の土地と《燃焼/Conflagrate》を墓地に置き、彼にGRVで警告を出した。

公平であろうとすることの危険性

3枚目のカードがNAPにとって不確かであるという事に基づくと、HCEの裁定を出したくなる。実際、フロアジャッジは始めにそう裁定を下した。しかし、この裁定がHCEの理念にそぐわないという点に加えても、これは非常に危険なことである。我々には次のような基本原則があるにもかかわらず、対戦相手が不注意だったことによって利益を得られるということになってしまうのだから。 「両プレイヤーには、ゲームの正しい状態を維持し続ける責任がある(もっとも、その度合いは多少異なる)。」 従って、このような状況でのルーリングは、論理的な根拠に基づいた理念に従う必要がある。発掘で落とした3枚のカードを対戦相手がはっきり覚えていないという事実は、どれほど理にかなっていようとも、理念からそれる正当な理由にはならない。

探すことを断る

プロツアーの最中に、L2ジャッジのMikael Rabieが私にメッセージをくれた。彼はいつもライブフューチャーマッチをとても注意深く見ている。その興味深いメッセージによると、あるプレイヤーが対戦相手に《流刑への道/Path to Exile》を撃たれたにもかかわらず基本土地をサーチせず、その次のターンにゲームを決定づけるカードをトップデッキしたというのだ。

これはとても奇妙な巡りあわせで、調査に値するものだった。なぜ追加で得られる土地を断るのだろうか?この疑問に対する一番明快な理由は、スリーブがマークドで、次に何を引くか知っていたということだ。

私がそのテーブルに向かおうとした時、Mikaelが私に告げた。「彼がプレイしていたのはナヤZOOで、通常そのタイプのデッキには2枚か3枚しか基本土地が入っていないのだ。そしてその時彼は既に2枚の基本土地を出していた。カメラの前でプレイしているゲームを止めに入る前に、デッキリストをチェックするべきだ。」果たして彼のデッキリストには2枚しか基本土地がなかったので、不正行為はなかったと判断し、ゲームは中断されずに済んだ。

注目のジャッジ

誠実であることの重要性

我々が上達するには、フィードバックに耳を傾けるしかない。日曜日にMatt WilliamsとJess Dunksが私のもとにやって来て、ジャッジの休憩時間の割り振りをより良くするにはどうすべきかについて、建設的な議論を交わした。カバレージ取材にペースを引きずられるというプロツアーの独特な構成は、休憩時間の割り振りを事前に確定させることを困難なものにしていた。休憩を与えられるタイミングを予測できなかったし、またこの構造的欠陥を周知するべきだった。そうしなかったために、スケジュールの見通しを立てるのに私は失敗した。ジャッジ全体がより良く動けて私も安心できるプランをチームリーダーが持って来るなら、そのプランを検討するべきだった。彼らがそれを伝えてくれるまで、そんなこと私は思いもよらなかった。まさにこの教訓だ。  「計画がないなら、ないと言おう!」

モチベーションが根底にあることの理解

事実確認のために調査していた時、Hans Wangが私の興味を引いた。ゴネ得プレイでゲームが決まっていたというのだ(原文 the contentious play was actually game-decisive.)。私がいくつかのレポートで強調しているように、ライフを数えることはゲーム調査時には必須なのだが、この時はそれをすっかり忘れていた。大事なパズルのピースなのだと証明できたのにね! (訳注:訳者の理解力が足りず、この段落の趣旨がつかめませんでした。)

Kevin Desprez