Whats Up, Docs?よりKevinDの“Backing up : Philosophy and Methodology”の翻訳です。良い巻き戻しとはどのようなものか?その方法と考え方について実際にあったケースを例に挙げて解説しています。

原文はこちら(2015/8/20付)


『マジック違反処置指針(IPG)』には、その他一般のゲームルール抵触行為(GRV)があった際の二つの選択肢が記されている。

  • 違反が以下のいずれかの分類に当てはまり、かつ、その分類だけに当てはまる場合、単純な巻き戻しが可能でないかぎり、記された措置を行う。
  • どれにも当てはまらなければ、巻き戻しを検討するか、ゲームをそのまま続ける。

ここから、いくつかの質問が浮かび上がる。

  • 単純な巻き戻しが可能なのはどんなときか。
  • ゲームをそのまま続けるのではなく巻き戻しを検討するのはどんなときか。

私も、レベル3以上のジャッジとして巻き戻しの相談を受けたときやヘッドジャッジとして上告を受けたとき、これら二つの質問を念頭に置いている。この問題に対する私の考えと、例えルールに書かれていない状況でも可能な限り一貫性を保って巻き戻しを行えるよう組み立てられた手順を紹介しよう。

簡単な巻き戻し

凶暴な殴打

これはプロツアー『運命再編』で実際にあったできごとだ。( こちらの記事でも紹介している。)

APは《荒野の囁く者/Whisperer of the Wilds》をタップして、自身の《ラクシャーサの死与え/Rakshasa Deathdealer》とNAPの3/3を対象に《凶暴な殴打/Savage Punch》を唱え、すこし間を置いてNAPに目をやった。2/2の《ラクシャーサの死与え/Rakshasa Deathdealer》では格闘しても勝てないため、NAPは驚いた顔を見せた。そこでAPは気づいて「それから、《ラクシャーサの死与え/Rakshasa Deathdealer》をパンプします。」と付け加えたので、NAPがジャッジを呼んだ。

裁定は極めて簡単だ。間を置いたことが優先権の放棄を意味することは明らかだ。前のターンにAPの4/4が死亡していたため、獰猛を満たしていないことにAPは気づいていなかった。(調査の結果、故意の違反の可能性は排除された)

  • (獰猛によって+2/+2されるので)《ラクシャーサの死与え/Rakshasa Deathdealer》は格闘で一方的に勝つとAPは思っていた。
  • (獰猛を満たしていないと)《荒野の囁く者/Whisperer of the Wilds》単体では2マナ出ない。

つまり、誤りは2つある。一方は戦略的な誤り(《ラクシャーサの死与え/Rakshasa Deathdealer》が修正を受けないことに気づかなかった)で、もう一方は技術的な誤り(不十分なコストの支払い)だ。ジャッジとして、前者の事実を判断する前に、後者を正すべきだ。

幸いなことに、呪文はまだ解決されていない、つまり誤りが起きて間もないところだった。なんて簡単に巻き戻しだろうか!このタイミングなら《解放された者、カーン》の大マイナス能力だって巻き戻せるさ。(呪文がまだスタック上にあるので)。私は他に選択肢がないか少し考えて、これで問題ないと結論づけた。どうみてもAPに有利でNAPに不利な裁定だが、ルールにもそう書いてあるようだから仕方がない。

簡単じゃないかも?

“そう書いてあるようだ”と言ったのは、後から考えるとこの裁定は最適ではなかったと思うからだ。 私は《凶暴な殴打/Savage Punch》を唱える時点まですべての行動を巻き戻した。つまり、APが《凶暴な殴打/Savage Punch》を唱える前に《ラクシャーサの死与え/Rakshasa Deathdealer》の能力を起動することを許可したのだ。これはルール上正しいが、最適ではなかった。巻き戻すことによって、《凶暴な殴打/Savage Punch》を唱えた時点では気が付いていなかったことに、気がついた状態でゲームを再開させてしまったのだ。

つまり、私はゲームを本来の状態に近い形に巻き戻せなかった

今再び同じ状況に直面したら、巻き戻しをせずそのままにしておくだろう。《凶暴な殴打/Savage Punch》を唱えるために支払われたマナは不足しているが、そのまま解決する。この裁定は奇妙に見えるがルール上一番の選択肢だ。

ところでこれは、巻き戻しをしてはならないという意味ではない。危険な場合もあるが、巻き戻しは確かに有益だ。 巻き戻しを検討するときは、巻き戻しがもたらす影響について慎重に考える必要がある。

難しい巻き戻し

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私は次のようなトラブルでコールを受けた。APは予示された《再利用の賢者/Reclamation Sage》を表向きにしたときに間違えて戦場に出たときの誘発型能力を誘発させ、NAPの《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》を破壊してしまった。その後戦闘を経てNAPのターンに入り、NAPは《悲劇的な傲慢/Tragic Arrogance》を唱えた。NAPは《森の女人像/Sylvan Caryatid》を残すことを選んだが、もし《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》が破壊されてなければ、《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》を選ぼうと思っていたかもしれないので、間違いの影響は甚大だ。

最初にルールの違反が起きてから、いろいろなアクションがあった。順番に上げると

  • NAPの《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》が破壊された。
  • APは《囁きの森の精霊/Whisperwood Elemental》を含む何体かのクリーチャーで攻撃した。そして終了ステップの開始時に予示を行った。
  • NAPのターンに入ってNAPは《悲劇的な傲慢/Tragic Arrogance》を唱え、ターンを終了した。
  • APのターンに入ってカードを引こうとしたところで、APが間違いに気が付いた。引こうとしたカードはライブラリーから離れていたが、手札には触れていなかった。

間違いが起きてから2ターンも経っているので、巻き戻すことは強引だと感じた。このままゲームを進めるほうが安全だろう。

難しくないかも?

ところが、実は巻き戻すことができる。なぜなら、誤りが起きた時点以降にプレイヤーが得た情報は、すでに知られているものか、完全に無作為なものだからだ。

  • APはまだカードを引いていない。つまり巻き戻しても手札は変わらない。もっとも、カードを引いたからといって巻き戻しをできないわけではないけどね。

  • NAPは盤面を大きく変化させる呪文《悲劇的な傲慢/Tragic Arrogance》を唱えたが、両方のプレイヤーはそれがNAPの手札にあることを知っていた。《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》の能力によって、《悲劇的な傲慢/Tragic Arrogance》が公開されていたからだ。従って、ゲーム上の意思決定は、《悲劇的な傲慢/Tragic Arrogance》が公開されていることを考慮して下されたということになる。また、これがこのターン引かれたカードなので、巻き戻すとこれがライブラリーの上に戻ることは明白だ。

  • APはカードを予示したが、それは彼のライブラリーの一番上にあったカードなので、これも簡単に巻き戻せる。

大きな問題に見えたが結局、《再利用の賢者/Reclamation Sage》を表向きにしたところまでゲームを巻き戻すにあたって、これを妨げるものはなかった。(表向きにすること自体は正しいプレイなので、巻き戻すべきではない) なぜならば、未知の情報はなにもないからだ。

巻き戻した後にNAPが《森の女人像/Sylvan Caryatid》ではなく《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》を選んだこと以外は、両プレイヤーとも全く同じ順序でプレイしたのも興味深い。

巻き戻しの原理

今のゲームの状態をそのままにしておく理由

大きなルール違反が起きて、正しい状態からかけ離れているにも関わらず、ゲームをそのままの状態にしておく理由から話そう。

プレイヤーは違反後のゲームの状態に基づいて、ゲームをプレイしていると考えられる。これが、巻き戻しを行わない主な理由だ。この「間違った」ゲームの状態は、プレイヤーにとって正しいゲームの状態になっており、それに基づいてプレイを続けているからだ。

ゲームの状態を修正することによって、何をしてもゲームを崩壊させるだけのことがありうる。 ジャッジにそのつもりはなくとも、だ。

部分的な巻き戻しについて

巻き戻しは部分的にしてはいけない。間違った時点まですべて巻き戻さなくてはならない。 戦略によって結果がどのように変化したのかを判断することは難しい。部分的な修正について非常に慎重になる理由はこれだ。

巻き戻す理由戻し

我々が巻き戻す時に心がけていることは、ゲームを自然な状態に戻すことだ。 巻き戻すことによって我々ジャッジはプレイヤーに、正しいゲームをプレイさせようとしている。 この巻き戻しはゲームの状態を本来のものに近づけるか?あるい遠ざけるか? 巻き戻しを検討する時は、これを自分自身に問うべきだ。

手順:ひとつずつ巻き戻し法

これは私が何度も巻き戻しを行ううちに思いついた手順で、今では可能な限りこれに沿って巻き戻しを行うようにしている 。

  • 順番にひとつずつ戻す。カードを引いたり探したりしていた場合は、巻き戻しを失敗した時に備えてそのカードを明確に区別できるようにする。
  • 行動が一つでも私にとって納得のいくものでなければすぐに巻き戻しをやめて、ゲームをそのままにする。
  • もし全ての行動が巻き戻せて、それが納得のいくものならば、それが私の下す裁定になる。もちろん上告があるかもしれないので、手札や戦場から離れるカードは明確に区別することが大切だ。

この方法にはいくつかの利点がある。

  • もし巻き戻すとしたらどうなるかといった予想はせずに、ともかくひとつずつ巻き戻す。
  • プレイヤーが得たかもしれない情報を取り消すために、ジャッジが間違いを修正し、ゲームの情報を巻き戻そうとしている様子をプレイヤーに直接見せる事ができる。
  • 巻き戻しが不可能であるとわかったとき、この方法で巻き戻す過程を実際に見せることで、巻き戻さないという裁定を下したときに考えを述べるだけよりも、明確な根拠を示すことができる。「この事実に基づき、私は正しいゲームの状態にならないと判断する。」と言うのは 「私は巻き戻せないと思う!」と言うより説得力がある。

合理的な定義

誰かが見たり聞いたりした事は決して取り消せない。したがって、あなたが最も注意を払うべき要素は得てしまった情報についてだ。 たとえば、公開されたインスタント呪文は、対戦相手はそれを持っていることを確信してプレイできるので、インスタント呪文としての多くの価値を失う。また、情報がないことも情報と同じくらい強力である。プレイヤーがマナ・ソースを使わないまま何度か優先権を放棄したことは、彼のハンドがそれほど強くないことを意味するかもしれない。 良い巻き戻しとは、部分的な修正のようなものだ。

もしあなたがゲームの状態を部分的に修正することが簡単だと感じたなら、巻き戻す根拠がきっとある。巻き戻してゲームを再開してもほとんど(可能な限り何も)変わっていないことをプレイヤーに確認させることが、手順をきちんと行う主な理由だ。

Kevin Desprez.

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コメント

匿名 より:

すばらしい記事でした。 翻訳ありがとうございます。

簡単じゃないかも?
の項で、 一文だけ敬体で訳されています。

pb4690 より:

ありがとうございます!
急ぎ修正します。

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